真空管ラジオ トップ サンヨー R-421156【整備・調整済】

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商品情報

[商品概要]
昭和36年(1961)発売マジック・アイ付 2バンド mT管トランスレス5球スーパーです。
寸法と重量:幅590*高150*奥135mm(ツマミ等、突起物を含まない) 重さ:約2.5kg スピーカー:10×15cm 楕円型 2個
ボディカラー:アイボリー
真空管構成(オリジナル時):12BE6/12BD6/12AV6/30A5/19A3/6ME10(マジック・アイ)

長~いラジオです。「リムジン タイプ」とでも言いましょうか。
「それがどうした」って話ですが、斜め下から見上げると、何かカッコいいです。
私の知っているかぎりでは、リンカーンの5M-W6(644mm)の次に長いプラスチックキャビネット機です。
このR-421156という機種はSF-95と類似と言いますか、正直、どこが違うのかわかりません。^^;
内部に貼ってある回路図のタイトルはSF-95になっており、少なくとも内部は同一のものと思われます。
中波(MW)と短波(SW)のダイアルスケールが横並びになっています。プラキャビ機では類を見ないものです。
良質のアルニコスピーカーが使われており、NFBと相まって、優れた音響特性を有しています。
5本の真空管全てに抜け防止のチューブクリップが付いています。
背の高い電力増幅管と整流管の2本にチューブクリップが付いているラジオは良く見ますが、
全ての真空管に付いているラジオは初めて見ました。
取り廻しには注意しないと、あちこちぶつけてしまいます。(リムジンだから^^;)

出来るだけ長く使えること、実用的であることを念頭に整備しました。
正しい整備、調整を行ったかどうかは、各種測定をもって可能な限り客観的に検証しています。(写真④~⑥⑬~⑲)
写真の後、整備内容等を記します。[基本説明]と[補足説明]という構成です。
[補足説明]は[基本説明]で記述した事の技術的データや説明、根拠を提示しています。
まず、[基本説明]を読んでいただき、ご自分に必要な項目だけ[補足説明]を読んでいただければ結構です。
気になる点があれば、遠慮なくご質問下さい。






* * * この商品案内は、大きい画像を70枚程度まで増やせるいめーじあっぷを使用しました。 (無料)* * *--------------------------[基本説明]----------------------------------------------
【外観上の留意点】
[キャビネット]
大きなワレ、カケはありませんが、小さなキズや打痕が残っています。
ダイアルのバックパネルになる部分に直径1cmくらいの膨らみがあります。(写真⑨)
経年の使用で出来たものとは思えません。おそらく成形時に出来たもの、率直に言って成形不良だと思います。

[フロントパネル]
ダイアルスケール(透明の部分)に熱に依ると思われるキズが1ヶ所(写真⑩)、針で突いたような打痕が数ヶ所あります。(写真⑪)
スピーカーグリルの塗装は、若干、経年劣化を感じます。

ツマミのベース部の銘板は、入手時失われていた為、印刷したものを貼り付けています。
銘板の内容はオリジナルが不明なので、私が決めたものです。

【電気関係の留意点】
マジック・アイの輝度はかなり低下しており、昼間の明るい所ではキビしいと思います。夜間は何とか実用になります。
6ME10はmTサイズ トランスレス用マジック・アイで、互換できるマジック・アイはありません。

12BD6を12BA6へ換装
受信感度が若干物足りなかったので、中間周波増幅の真空管を12BD6から12BA6へ換装しました。
12BA6は12BD6の2倍のgm(相互コンダクタンス)を持っています。(12BD6:gm値2.0mS/12BA6:gm値4.4mS)
尚、この換装は受信感度測定後に行った為、交換部品等の写真には反映されていません。

オリジナルでは周波数選択型のNFBが採用されていましたが、
搭載されているスピーカーの良さがスポイルされている様に感じましたので、一般的なオーバーオールNFBへ変更しました。

チューニング(選局)操作が少し重たいです。
これは、ダイアルスケールを横に2つ並べた為、
スケール長を余り長く取れない(70mm)→プーリー径が小さい(47mm)→減速比が小さい→チューニング操作が重たくなる。
さらに、指針を2本動かす為に指針取付け金具が長くなり、摩擦が大きくなるというメカニズムで、
ダイアルスケールを横並びにした弊害と言えると思います。

【整備内容】
[キャビネット]
洗浄後、耐水ペーパー研磨、コンパウンド研磨。底面は洗浄のみです。

[フロントパネル、ツマミ、金属モール]
洗浄後、コンパウンド研磨しています。

(内部)
局発のPDコンデンサー2個とヒーター回路のバラスト抵抗は検査して再利用、
その他のコンデンサー(電解コンデンサー含む)、抵抗、配線は全て交換しています。

[その他の交換部品]
音量調整ボリューム/バリコンのブッシングゴム/ダイアル糸/ACプラグ付コード(PSE規格)/
ブッシング/ヒューズ/真空管(12BD6→12BA6)

※真空管(12BA6)は検査済み中古品、その他の交換部品は新品を使用しています。

[その他の整備内容]
セレクトスイッチ/電源、トーン切替スイッチは分解、洗浄(写真②)
バリコン洗浄/バリコン、セレクトスイッチの軸受け部、ダイアル機構のグリスアップ/
真空管ソケット、真空管ピンの洗浄、ピン・ストレートナーによるピン曲がり矯正(写真③)
スピーカーネット(フィルター用不織布)追加(写真⑫)

(新たに付け加えた機能)
[LEDによるダイヤル面の照明]
高輝度広角LED 4個でダイアル面を照明しています。

[電源表示パイロットランプをLEDに換装]
整流管のヒーター断線リスクの低減が一番の目的です。(ヒータータップを使わない)
ダイアル面の照明と共にほぼメンテナンスフリー(今後交換の必要なし)です。

[外部入力端子](写真⑧)
3.5mmステレオミニジャックに換装(出力はモノラル)
スマートフォンやミュージックプレーヤー等、携帯端末の接続を想定しています。
Bluetoothレシーバーも問題なく使用できます。
音量調整は、外部機器側、ラジオ側両方で行えます。うまくバランスを取って下さい。
本機は入力電圧約80mVで無歪最大出力(0.5W)を出せます。
おそらく、ほとんどのスマートフォンで無歪最大出力程度は出せると思います。
グランドループアイソレーターでAC100Vラインとは完全に分離していますので、感電の恐れはありません。

[イヤホーンジャック]
3.5mmステレオミニジャックに換装(出力はモノラル/ローインピーダンス型に回路変更)
一般的なステレオイヤホーンが使えます。
オリジナルのイヤホーンジャックを加工してハウジングとして利用しています。

[マジック・アイのON/OFFスイッチ](写真⑧)
背面の外部入力ジャックと並べて取付けています。活用して下さい。
ローサイドスイッチングで高い電圧は印加されていません。

【調整等】
目視による配線チェック/各部電圧チェック(回路図に記載)/IFT調整(写真⑬⑭)/
トラッキング調整/単一調整(1400kHz,12MHzで感度最大)
周波数読み取り精度は、中波(MW)ではほぼピッタリ合っています。
短波(SW)は指針1~2本分、高い方へズレています。

[受信感度](写真⑯⑰)
中波、短波とも、十分な受信感度を有しています。
短波の低い方で感度低下が見られますが、最下端で100uV程度ですので、特に感度が悪いわけでは無く、
バンド内の感度偏差が多少大きいと見るべきだと思います。

[ハムに関して](写真⑥⑮)
周りが静寂の時、ボリューム最小でスピーカー正面から10cm位の所で、ハム音を識別できる程度です。
放送受信時には放送波、セットノイズに埋もれて、ハムは聞こえません。
※ハムが最小になるのは電源オンから数分後、真空管のヒーターが十分安定してからです。
 (起動時間は電源オンから15~20秒です。)

[音質について](写真⑱⑲)
NFBと良質のアルニコスピーカーで、ダンピング(歯切れ)が良く、解像度の高い音質です。
キャビネットの大きさもあるので、それなりにスケール感も出ていると思います。
ファンク・ミュージックやクラブ・ミュージックとの相性が抜群で、
このラジオではジェームス・ブラウンとかそっち系統を垂れ流し(podcast)^^;

(試聴)
[中波帯(MW)]:NHK第一、第二、地元ローカル局、近県の民放局がそれ相応の信号強度で受信できました。(付属の室内アンテナ使用)
[短波帯(SW)]:ラジオNIKKEI、BPM(中国標準時報局)、韓国KBS、中国Cri等受信できました。(窓枠アンテナ使用)

(ランニングテスト)
10日ほど使用していますが、不具合はありませんでした。大変安定しています。

(付属品)(写真⑦)
・室内アンテナ:簡単に脱着できる様、ピンコネクタを付けてあります。掃除の時など便利です。
先端部に丸端子を打ってありますので、適当なところに押しピン等で固定して下さい。
・外部機器接続ケーブル(3.5mm⇔3.5mmステレオミニプラグ 90cm長で金メッキ、スリムプラグです)
・オリジナルの回路図、整備後の回路図(新規作成CAD図面 A4版)、糸かけ図
・簡単な取扱い説明書
※外部接続機器、Bluetoothレシーバーは付属品には含まれていません。

出来るだけ長く使えるよう、私にやれることはやってありますが、製造後約60年を経た部品が残っています。永年の保障はできかねます。
電気的な不具合が発生した場合、概ね一ヶ月程度は初期不良として対応いたしますが、その後はご容赦下さい。
今後の修理、メンテナンスについては別途お受けしております。詳しくは取説をご覧下さい。
外観に関しましては、これ以上の術を持ち合わせていませんので、ご容赦願います。

※代理入札、転売されたものであった場合は、初期不良対応も含め、一切のサポートは出来ません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(発送)
ヤマト運輸:送料元払い 120サイズ
通常料金より10%の割引になります。
ヤマト運輸料金検索
配達時間指定が必要な方は、お支払い手続きまでに[取引メッセージ]でご連絡下さい。
(こちらからは特にご案内は致しませんので、お忘れなく)

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【整備内容】
[抵抗]
カーボン/酸化金属皮膜

[コンデンサー]
高周波回路:積層セラミック、ディスクセラミック、チタコン、スチロール/低周波回路:積層セラミック、フィルムコン(PET/PP) /
平滑回路用電解コンデンサー:カテゴリー温度105℃/ ACライン間:安全規格 X2クラス認定品

[配線]
耐熱電線使用(UL3265)JIS 5色法に準ずる線色

[その他の整備内容]
セレクトスイッチ:接点抵抗は30mΩ以下まで回復しています。(洗浄には接点復活剤は使用していません。)(写真④⑤)
バリコン洗浄:Qは2000以上まで回復しています。(at 100kHz)(写真④⑤)

[真空管]
gm直読型真空管試験機でチェックしています。(写真④⑤)
検査項目:電極間絶縁/gm値(相互コンダクタンス)測定/Diode/Rect/ガステスト
ヒーターの起動時間は良く揃っています。

【本機の外部入力仕様】
・ラジオ/外部入力の切替回路 あり
・外部入力時、ラジオ放送の混入防止回路 あり
・音量はラジオ側でも調整可能
・ステレオ→モノラル変換:パッシブミキサーに依り外部接続機器を保護します。
・感電防止:グランドループアイソレーターに依り、AC100Vラインとは完全に分離、絶縁(トランスレスである為)
今回使用したグランドループアイソレーターは昇圧トランスも兼ねており、外部接続機器の出力を約4.5倍に昇圧します。
 外部機器と外部入力間の2箇所のインピーダンス接続点は、共に「ロー出しハイ受け」になっており問題ありません。

[受信感度](写真⑯⑰)
中波(MW):25uV(50mW/SN比20dB at1000kHz)[実測値]
短波(SW):40uV(50mW/SN比20dB at8MHz)[実測値]

短波帯で指針と目盛が若干ズレている原因について(考察)
局発コイルは1つのボビンに中波と短波、両方巻かれており、中波優先で調整すると短波は成り行き任せになります。
中波と短波の指針の位置関係がメカニカルで固定されており、微調整が出来ない。
実用にはほとんど問題ありません。

短波帯の下端での感度低下の原因について(考察)
アンテナコイルのボビンの材質が紙であり、直径も小さい為、十分なQが取れないのが原因かもしれません。
実用にはほとんど問題ありません。

[ハムに関して](写真⑥⑮)
広帯域測定で0.65mV、JIS-A測定(聴感フィルター有)で0.08mVです。
NFBの分を差し引く必要はありますが、トランスレス、2バンド、高音減衰型トーンコントロール付き
という条件ではかなり優秀な値と思います。
ただ、高音減衰型トーンコントロールのハイ・ポジションでは電圧増幅管のプレートに抵抗、コンデンサーが
開放された状態でぶら下りますので、どうしても誘導ハムを受けやすくなります。
ミッド、ロー・ポジションではほぼ無音になります。

[音質について](写真⑱⑲)
ラジオ放送受信時の周波数特性(電気的忠実度)は100Hz~2.2kHz(-3dB)
外部入力時の周波数帯域幅は、
Hi:115Hz~5kHz(-3dB)
Mid:45Hz~2.8kHz(-3dB)
Lo :45Hz~1.5kHz(-3dB)
もう少しNFBの帰還量を増やせば50Hz~10kHz程度の帯域幅になったと思いますが、
外部入力の入力感度を落としたくなかったので、-4dB程度の帰還量に留めました。

ダンピングファクターは約0.45です。NFB無しの6AR5の場合は0.1程度ですから、十分だと思います。

[本機の電気的諸元](実測値)
受信感度(MW):約25uV (50mW/SN比20dB at1000kHz)
受信感度(SW):約40uV(50mW/SN比20dB at8MHz)
残留ノイズ:広帯域測定:約0.65mV/JIS-A測定:約0.08mV
中間周波帯域幅:7.8kHz(-6dB)
中間周波選択度: -30dB(±10kHz)
最大出力:約0.8W
無歪最大出力:約0.5W
NFB負帰還量:-4dB
DF:0.45(at1kHz on/off法)
歪率:約0.8%(50mW時 1kHz THD+N)

選択度が良いので混信には強いです。

※受信感度の数値は擬似空中線回路網(JIS:C 6102-1:2019)を接続した時の値です。
※測定器類に精度の保障が出来ないものが含まれている為、測定値の精度は保障できません。

 [Coffee Break]
【アルニコスピーカー】
本機に搭載されているスピーカーにはNKS鋼磁石が使われています。(写真①)
NKS鋼は1934年に東北大学の本多、増本、白川 3人の博士が発明したもので、
KS鋼にチタン(Ti)を添加し保磁力を高めたもので、アルニコ8に相当するものと思います。

アルニコ磁石を使ったスピーカーは1975年位までは、多く生産されていました。
真空管ラジオには、KS鋼、MK鋼、NKS鋼等のアルニコ系磁石を使ったスピーカーが多く使われています。
アルニコという名称は主成分であるアルミニウム、ニッケル、コバルトをつなげたものです。
コバルトは所謂、レアアースですが、1960年位までは比較的安価だったようです。
しかし、1960年~1965年に発生したコンゴ動乱によって価格が暴騰しました。
(コンゴ民主共和国は世界最大のコバルト産出国)
その結果、安価で磁気特性も改善されてきたフェライト磁石に置き換わっていきました。
つまり、アルニコが使われなくなったのは特性が劣っていたからでは無く、
原材料価格の高騰が主な原因だったと言えるでしょう。
アルニコ磁石を使ったスピーカーは「ゼロ点電位が変化しない」という、フェライトには無い特性があり、
これが澄んだ音の秘密であるとも言われています。
また、アルニコスピーカーは磁気回路が内磁型で磁束もれが少ないので、
スピーカーと電気回路が同一キャビネットに入っているラジオには有利です。
今ではアルニコを使ったスピーカーは高級オーディオ、昔の中古品、
真空管ラジオに搭載されているもの位しか入手出来ませんので、できるだけ大切にしたいものです。
因みにJBLに4343という超有名なスタジオモニターがありましたが、この4343にはフェライトモデルとアルニコモデルがあります。
とちらが良い音がするかは置いといて^^; 今でもアルニコモデルに根強い人気がある事は確かなようです。
※アルニコ磁石にはパワー減磁(保磁力が落ちる)という欠点があるという事を申し添えて置きます。

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